油壺温泉

 今日は12月とは思えない暖かい日だった。京急のみさきまぐろきっぷを使っての小旅行、とても楽しみにしてた。 

 今日は息子も一緒のお出かけだ。もう18になったし、高校卒業したら親と出かける機会もなくなるだろうし、貴重な日だと思う。家を先に出た旦那はいつものように、かなり先を歩いては振り向き、早く来い、バカと急かす。この人は本当に変わらないな。せっかくの家族でのお出かけもいつもやたらと急かされる。子供がまだ幼児の頃でも同じだった。子供は真っ直ぐ歩けない、早くも歩けない、道端の花や昆虫に気を取られる。その度になんでそんなに遅いんだ、と叱責された。目的地に着くまでの道のりも家族での貴重な時間なのに、それが理解できないのだ。別に急ぐ旅でもないのに、何故急ぐ必要があるのか。今日も別に旦那は1人で行き、私と息子と行くでも問題ないのだが。

 4人掛けの座席に座りたいからと、始発の駅までわざわざ行ったけど、結局目的の駅に着くまで、3人ともスマホをいじっていて、対面の座席に座る意味は感じなかった。話をする訳でも、景色を眺める訳でもない。まぁ、女子旅でもないから、今更話すこともあまりないけどね。

 みさきまぐろきっぷは、往復の交通費と昼食、あと思い出になる何かがセットになったお得な切符である。私と旦那は温泉に行くけど、お風呂に興味ない息子は、名産のお土産を交換すればいいと、昼食までは別行動になった。

 とりあえず駅から、油壺温泉までバスに乗る。道沿いには広い畑が広がっている。いつも思うけど、こういう所に住んで買い物なんかはどこでするのだろう。カラオケ、ワークマン、ラーメン店はあるな。ちょっと大きめのスーパー発見、駐車場が広い、そして車が沢山停まってる。最寄りのバス停で降りる高齢者も沢山いる。みんなここで買い物するのね。

 終点の油壺温泉で降り、息子はここから別行動。油壺温泉の近くには油壺マリンパークがあったけど、今はなくなってしまったので、わざわざここに来る人も少なそうだ。

 今日の目的地、ホテル京急油壺観潮荘に到着。私と旦那は日帰り入浴を選択。なんか古びたホテルだなぁ。サウナなんか絶対ないよねぇ。靴箱に靴をしまい、鍵をロッカーの鍵と交換してもらう。フェイスタオルを一枚渡されてお風呂に向かう。

 思った通りの、古い感じのお風呂。カランも8個かな、少なめである。入ってすぐのとこに使用禁止と張り紙されたガラス張りの小部屋みたいのがある。ここがサウナなら最高だけど、ただの何もない空間である。室内風呂と、露天風呂、あと樽風呂があるが、それだけと言えばそれだけ。 

 露天風呂の景色がいいのがせめてもの救いだ。目の前には枯葉のぶら下がった木が2本、その後ろに海、入江?が広がっている。今日は風が強いので、木々のざわめきが凄い。見上げるとすくっと伸びた椰子の木がゆらゆら揺れている。青い空に白い雲が素早く流されていき、カモメが何羽も飛んでいる。枯葉をよく見ると多分桜の葉だ。春には2本の満開の桜の間から海が臨めるのだろう。お湯の温度は熱くもなく、ぬるくもなく長く入っていられる。お湯はちょっと塩辛くて身体が温まる感じ。

 先客の高齢婦人の2人がいろいろ話している、多分近所の人か。3月になるまで、何度あとここに来れるか?とか?引越しでもするのかな?

 サウナ代わりにあったまったら、シャワーを浴びる。最初は水が出ますと書いてあるけど、いつまで経っても水だ。水で全然構わないので、身体を冷やして椅子で休む。風のざわめき、鳥の声に癒される。何度か繰り返して、少し寝ちゃってた。そろそろ上がる時間だ。

 今度はバスに乗って、お昼を食べに三崎港に向かう。途中で息子がバスに乗り込んできて、そのまま城ヶ島へ。ランチタイムはかなり混雑してるので、ちょっと城ヶ島を散策する。

 今日は風が強いので、波がかなり荒い。ちょっと怖いくらいだ。足元も岩場が濡れていて滑りやすい。小さな水溜りの中にヤドカリなんかもいて、子供が小さかったら喜んだろう。

 そろそろお腹も空いてきたから、バスで三崎港に戻ろう。街中も散策したいから、手前のバス停で降りる。旦那はバス停の前にある昔ながらの酒屋に入り、缶ビールを購入。お風呂上がりのビールは最高だね。

 昔ながらの商店街はシャッター通りで、開いてる店はまばら。数少ない店は観光客向けで、ちょっとおしゃれな感じがする。でもオフシーズンだから、観光客も少ないし、誰もいない店にはやはり入りにくいや。

 旦那は街並みやおしゃれな店をカッコいいと絶賛するけど、私が見たらただの寂れた商店街。ここは観光客向けの街なのだ。やっぱり東京の都会育ちの旦那と、田舎育ちの私では見方が違う。うちの田舎も近所には必要な日用品を買えるようなお店も少ないし、地元の人間には住みやすいとは言えないと思う。もう2度と来ないかもしれない人に、カッコいい街と言われて嬉しいかな。

 お昼ご飯は、息子がパンフレットから選んだお店に決めた。まぐろ食堂七兵衛丸という所。お昼に息子が見たときは、凄い行列だったらしい。今は3時だから、すんなり入れた。お刺身定食2つと海鮮丼、ビールとお魚の唐揚げのセットを注文。まずビールが来て、なかなか出てこないおつまみ。旦那はいつも一緒に来るように注文するから、ちとご機嫌斜め。その後も定食の味噌汁がひなた水みたいにぬるかったり、店内でどこか工事をやってるようで、工事現場そのままの音が店内に鳴り響くから、クレームを入れる。

 ご飯は美味しかったけど、サービスは中の下という所か。営業中に工事やるとか、全くの問題外。

 トータルだと悪くない休日だったな。観潮荘は来年の3月に営業終了すると入り口に書いてあった。おばちゃんの引越しや、余命宣告ではなかった。せっかくいいお湯なのに残念。